ざっくり解説ITテクノロジー③ 「地球サイズの望遠鏡を用意する」
em0です。前回は
ざっくり解説ITテクノロジー② 「ブラックホールの写真をどのように撮影するのか」
として、ブラックホールの撮影がとてつもなく難しく、そのためには地球サイズの望遠鏡を用意しなければならないということを紹介しました。
地球サイズの望遠鏡を、地球の上に建設するなんて不可能ですよね。それを可能にしてしまうのがITの力、今回はどのようにして地球サイズの望遠鏡を実現するのかという点について、引き続きざっくりと解説して行きます。
まず、当たり前ですが一枚の地球サイズの反射鏡を用意するのは不可能です。ではどのようにして実現するのかというと、世界中の望遠鏡を繋げます。
"The Event Horizon Telescope" と名付けられたこのプロジェクトはコンピュータの力で世界中の望遠鏡を連動させ、地球サイズの望遠鏡と同等の成果を得ようというものです。
その方法は、まず原子時計によって、精密なタイミングで世界中の望遠鏡を同期させます。それら連動した望遠鏡を用いて、各地の観測地点で光を捉え、数千兆バイトという多量のデータを収集します。収集されたデータはマサチューセッツの天文台に送り、処理されてブラックホールの像を作り上げるというわけです。
もう少し、講演内の映像を含めて詳しく説明します。
左図のように、地球の上にあるいくつかの天文台が一生懸命観測したとしても、右の図のように対象の、ほんのわずか一部の情報しか得ることはできません。
しかし、地球は自転を行います。(講演内では地球をミラボールと見なして、回転するイメージだと言う風に語られていました。)
自転によって、望遠鏡が建設されている観測地点以外からの光を集め、対象の情報をより多く集めることができると言うわけです。
もちろん、ミラーボールのように地球が回転するとは言っても、得られる情報にはたくさん穴があり、完璧な像を再現することはできません。
従って、得られたわずかなデータを元に、足りない部分を補完することで画像を作り上げます。わずかな情報から予測され、生成された画像には無数のパターンがあるので、その中からさらにブラックホールっぽいなという画像に絞り込みます。(講演内では、似顔絵捜査官がわずかな特徴の情報から、人間の顔はこういう構造をしている!という前情報をもとに犯人の顔を予測した絵を描きあげるようなものである、という風に語られています。)
さて、こうして作られたブラックホール(だと思われるもの)の画像たち。
果たして本当にブラックホールの画像なのでしょうか?
どれが本当のブラックホールの画像なのでしょうか?
講演者の開発した画像処理アルゴリズムは素晴らしいもので、確かに得られたいくつかの画像の中に答えがあったとしても、どれがブラックホールの写真なのか本当の答えはわかりません。
何故なら、
私たちはブラックホールの真の姿をまだ見たことがないからです。
ここが一番の問題点です。次回はブラックホールの撮影についてのざっくり解説最終回、「見たことがないもの、見えるはずのないものの真の姿をどうやって予測するのか。」についてお話しようと思います。
今日はここまでです。
em0でした。
em0